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ChatGPTなどの生成AIがますます身近なものとなっている中、「AI PC」と呼ばれるAI処理が得意なPCが販売されるようになってきました。
「AI処理が得意なPC」という紹介のされ方をすることが多いこの「AI PC」ですが、いわゆる「生成AI」との関係性や「できること・できないこと」を正しく理解していないと、後悔の残る買い物になってしまうかもしれません。
今回は最近話題になりつつある「AI PC」について解説していきます。おすすめのモデルなども紹介しますので、ぜひPC選びの参考にしてみていただけると幸いです。

ゲームPCラボ管理人
KUL
当時ハマっていたMMOが好きすぎてそのまま運営会社に就職、その後ゲーム内イベントの企画やデバッグ・GMなどを担当していました。今は業界から離れてしまったもののゲーム好きなのはずっと変わらず。
社会人になりたての頃に何もわからないまま購入したゲーミングPCで失敗…。最近周囲でゲーミングPCを検討する人が増えてきたこともあり、自分と同じ失敗をしてほしくないという思いからこの「ゲームPCラボ」を立ち上げました。
最新GPU「RTX5060Ti 8GB」を搭載した、いまイチ押しのおすすめモデル!
CPUには「Ryzen 7 7700」を採用し、メモリとストレージもそれぞれ32GB・1TBを標準搭載しているため、大きなカスタマイズの必要もなく、初心者の方でも扱いやすいモデルです。
AI処理が得意な「NPU」が搭載されたPCのこと

「AI PC」とは一般的にNPUが搭載されているPCのことを指します。
NPUは「Neural Processing Unit(ニューラルプロセッシングユニット)」の略称で、AI処理を専門に行うために設計されたチップのことを指します。2025年現在、NPUはグラフィックボードのように独立したパーツではなく、内蔵GPUのようにCPUのパッケージに内蔵される形でPCに搭載されています。
「ローカル型」のAI処理が得意なPC
AI PCは「ローカル型」のAI処理が得意なPCです。
「ローカル型」とは自分のPC上(ローカル環境)でAI処理を行う形式のことを指します。通信環境を問わずAI処理を扱うことができるため、ネットが繋がらない場面でもAIを活用できるというメリットもあります。
一方で、自分のPC上でAI処理を行うためPCの処理性能が不十分だとAIの能力も制限されてしまうというデメリットも抱えています。

AI PCに搭載されているNPUは、この「ローカル型」を採用しています。
一方で、最近話題の「ChatGPT」や「Gemini」、「Stable Diffusion」などの大規模生成AIは、主に「クラウド型」を採用しています。
「クラウド型」は自分のPCではなく別の場所にある高性能のクラウドサーバーでAI処理を行う方式のことを指します。AI処理はすべてクラウドサーバーが行うため、性能が低いPCでも高度なAI処理技術を活用することができるのが大きなメリットです。

ただし、外部のサーバーとの連携を行う関係上、ネット環境のある場所でしか使うことができないというデメリットもあります。
「ちょっと優秀なアシスタント」が1人付いてくるようなPC
色々説明しましたが、AI PCは簡単に言うとちょっと優秀なアシスタントが付いてくるPCというイメージです。
注意すべきなのは、あくまでも「ちょっと」という点です。
AI PCに搭載されている「NPU」の技術はまだ発展途上のため、クラウドサーバーほどのAI処理はできません。たとえるなら、「遠方にいる優秀な秘書」(クラウド型)と「身近にいる親切なアシスタント」(ローカル型)という感じでしょうか。
優秀な秘書は、その能力を活かしてやりたいことは大体なんでも手伝ってくれます。ただ、遠方にいるため連絡手段がないと指示ができないというデメリットがあります。
一方で、アシスタントは常に身近にいるので、何かあっても阿吽の呼吸ですぐに手伝ってくれることがメリットです。秘書と比べるとどうしてもできることや能力は限られるのがデメリットですが、外部との連絡が取れない状況でもしっかりとサポートしてくれます。

それではここからは実際にAI PCを使うとどんなことができるようになるのか、逆にAI PCは何が苦手で何ができないのかを確認していきましょう。
【できる】カンタンな映像・音声・画像などの編集補助
AI PCを使うことで簡単にできるようになることの例としては下記のようなものが挙げられます。
- 音声ファイルのノイズ除去
- 文字起こし
- 文章・資料の要約
- 写真の背景ぼかし・色調補正のサポート
- 音楽のボーカル分離
NPUに対応したソフトが別途必要にはなりますが、これまで人間がCPUやGPUを使って行っていた作業が、NPUによってより低負荷・低電力・効率良く行えるようになりました。

「手動だとちょっと面倒だな~」という作業が、AIの力を借りることでより早くより正確に行えるようにもなっています。
【苦手】「生成AI」のように何かをゼロから生み出すこと
一方で、AI PCはゼロから何かを生み出すような大規模な生成はまだ苦手です(2025年6月現在)。
AI PCに搭載されている「NPU」は、CPUやGPUと比べて効率良く作業が行えるのは確かなのですが、とはいえNPU自体の性能はまだ発展途上で決して高くはないという問題があります。
文章生成や画像生成のような高い処理性能が求められるAI作業に関しては、「クラウド型」であれ「ローカル型」であれ、依然として「NPU」ではなく「処理性能の高いGPU」が必要です。
PCの演算能力を示す指標に「TOPS」というものがあります。TOPSは「Tera Operations Per Second」(1秒間に1兆回の演算ができる能力)の略語で、AIを用いた処理を行うにはおおむね下の表のTOPSが必要とされています。
用途 | 必要なTOPS目安 |
---|---|
音声アシスタント 顔認識 ノイズ除去 | 1~5 TOPS |
リアルタイム文字起こし 簡単な写真補正 トリミングなど | 5~10 TOPS |
高度な画像解析 リアルタイム翻訳 画像・映像の自動編集 | 10~30 TOPS |
軽量なチャットボット 小規模な文章生成 | 20~50 TOPS |
画像生成 (Stable Diffusionなど) | 80~120 TOPS |
大規模な文章生成 (GPT-3と同等以上) | 500~1000 TOPS |
最近の「NPU」は性能の高いもので「50TOPS」(1秒間に50兆回の演算が可能)程度のものがありますが、上の表を見る限り、それでも軽量なチャットボット程度の処理が限度……。まだまだ「ChatGPT」や「Stable Diffusion」のような生成AIが動かせるほどではないというのが現状です。
このことからも、「NPU」を搭載したAI PCはあくまでも作業補助的な役割を担わせるくらいに留まるということがお分かりかと思います。

何度も繰り返しの説明にはなりますが、AI PCは「ネットに繋がなくてもがっつり生成AIが使える!」というようなものではないので注意が必要です。
ちなみに、同じくAI処理に長けている「GPU」はどれくらいの処理能力があるのかというと、下記がだいたいの目安になります。
GPU | TOPS目安 |
---|---|
RTX 3060 | 約100 TOPS相当 |
RTX 3090 | 約280 TOPS相当 |
RTX 4060 | 100~140 TOPS相当 |
RTX 4080 | 約400 TOPS相当 |
RTX 4090 | 約 600 TOPS相当 |
NPUと比べるとやはり処理能力はかなり高め。現在のエントリークラスのゲーミングPCに搭載されているRTX3060やRTX4060でさえ、現行のNPUの2倍以上の性能を持っています。

本格的にローカル環境で生成AIを動かしたい方にとっては、やっぱりまだNPUではなくGPUがおすすめ。正直なところを言うと、本格的にAIを使いたい人はそもそもAI PCではなくゲーミングPCやクリエイターPCを選ぶべきという感じです。

さて、ここまで色々と書いてきましたが、結局AI PCが向いているのはどんな人なのでしょうか?
SNS用などでちょっとした動画や画像の編集をしたい
まず一番おすすめなのは、SNSやWEBサイト用に普段からちょっとした編集作業をすることがある方。
先ほども説明した通り、AI PCは写真・映像の補正や音声のノイズ除去などのちょっとした作業のサポートが得意分野です。
IllustratorやPhotoshop、Premier Proなどの本格的な編集ソフトを使うほどではないものの、日常的に何かしらの編集作業を行っている方はAI PCの恩恵を受けられる可能性があります。
幸いにもAI PCはグラフィックボードを搭載していないぶん、ゲーミングPCやクリエイターPCほど高額ではないことも多いため、カジュアルにAIのサポートを受けてみたいという方にとってはアリな選択肢です。
仕事で会議の文字起こしや資料の要約などに使いたい
AI PCは仕事用のPCとしてもおすすめです。
会議の文字起こしや資料の要約などの日常業務のちょっとしたサポートは、まさにAI PCの得意分野です。
のちほど紹介しますが、NPUを搭載したノートパソコン型のAI PCも多く販売されているため、リモートワークやWEB会議などが多い方にもおすすめです。

本格的な映像や画像を編集するプロクリエイター
あくまでも補助的なことしかできないので本格的な編集作業のサポートを求めている方には不向きです。
ChatGPTなどの生成AIがクラウドサーバーの高性能な「GPU」を使って処理を行っているように、そもそも現状のAI作業は「NPU」よりも「GPU」の方に高い適性があります。
より高度なAI処理を求めている方はGPUを搭載した「ゲーミングPC」や「クリエイターPC」の方がおすすめです。

ちなみに「ゲーミングPC」や「クリエイターPC」を購入する際にわざわざNPUが使えるモデルを選ぶ理由もあまりありません。スペックの高いGPUが搭載されてるならそのGPUでAI処理をした方が圧倒的に早いので、正直わざわざNPUを使う理由がないっすね……
グラフィックボードの搭載されているPCが欲しい
ほとんど繰り返しとなりますが、グラボが搭載されているPCであれば基本的にNPUは必要ありません。
前述した通り、GPUの方がAI処理の性能が高いため、わざわざNPU搭載モデルを選んでGPUとNPUを使い分けるメリットがが少ないです。強いて言うなら、NPUにAI処理を行わせた方が消費電力は若干低くなりますが、そもそもNPU搭載モデルの方が金額が高くなりがちなので、このメリットもそこまで大きいかというと微妙なところ⋯。
ただ、これはあくまでも2025年現在のNPUの性能においての話です。将来的にNPUの性能が上がることでGPUとの住み分けがさらに進む可能性もあります。
MousePro G4-I7U01BK-E

CPU | Core Ultra 7 258V (処理性能:47 TOPS) |
グラフィック | インテル Arc グラフィックス |
メモリ | 32GB |
ストレージ | 500GB SSD |
パネル | 14インチ液晶 (解像度:3840×2160、60Hz) |
重量 | 約0.95kg |
参考価格 (公式サイト) | 239,800円 |
CPUに「Core Ultra 7 258V」を採用したマウスコンピューターのAI PCです。
NPUは近年のAI PCの中では比較的高めの性能で、処理性能を示す「TOPS」の数値は47 TOPSとなっています。AI PCに求められる「簡単な作業補助」は問題なくこなせる十分なスペックを持っています。
また、Thunderbolt端子とHDMI端子を備えているためそれぞれモニターを繋いで3画面で作業することも可能で、事務作業用のPCとしての適性はかなり高め。

そして本モデルの何よりの魅力はその重量。一般的なノートPCは軽いものでも1.2kg~2kg程度のものが多いですが、「MousePro G4-I7U01BK-E」は約0.95kgとかなり軽く仕上がっています。
持ち運びが非常に容易なので、オフィスや自宅だけにとどまらず、外での作業や仕事が多い方におすすめのモデルです。
なお、映像や画像の編集用途で検討している人はカスタマイズでストレージを1TBに増設しておくと利便性が上がるのでおすすめです。
GALLERIA DL9R-IG-C4A

CPU | Ryzen AI 9 HX 370 (処理性能:50 TOPS) |
グラフィック | Radeon 890M |
メモリ | 32GB |
ストレージ | 1TB SSD |
パネル | 14インチ液晶 (解像度:2880×1800、120Hz) |
重量 | 約1.5kg |
参考価格 (公式サイト) | 189,980円 |
ハイエンドモバイルCPU「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載したドスパラのAI PCです。
「Ryzen AI 9 HX 370」はいま市販されているノートPC向けのCPUとしてはトップクラスの性能を誇り、NPUの処理性能も50 TOPSとAI PCとしてはかなりハイスペック、全体的に処理性能の高さが目立つ仕上がりとなっています。
また、特別性能が高いわけではありませんがGPUに「Radeon 890M」を搭載しているため、グラフィックボードが必要となるソフトウェアを一部扱えるのも嬉しいポイント。
重量は約1.5kgでノートPCとしては標準的な重さ。とにかく性能の高いAI PCが欲しいという方におすすめできるモデルです。
THIRDWAVE F-14LN5LA

CPU | Core Ultra 5 226V (処理性能:40 TOPS) |
グラフィック | インテル Arc グラフィックス |
メモリ | 16GB |
ストレージ | 500GB SSD |
パネル | 14インチ液晶 (解像度:1920×1200、60Hz) |
重量 | 約0.95kg |
参考価格 (公式サイト) | 142,980円 |
費用を少し抑えつつしっかりとAI PCらしさも感じたい方はこのモデルもおすすめ。
CPUの「Core Ultra 5 226V」はCPUとしての性能も上々、内蔵NPUも40 TOPSの処理性能をもっているためAI PCとしての性能はしっかりと抑えています。こちらのモデルも重量が比較的軽めで1kgを割っているのも嬉しいポイント。
また、本モデルは他のAI PCのノートと比べて比較的金額も安め。ちょっと良い事務用のPCを探している方なんかにもうってつけの製品です。
AI PCがあると「生成AI」が使えるようになるの?

「ローカル型」の生成AIに関しては「NO」です。「クラウド型」はもちろんOK!
AI PCで使えるようになる「AI」は「生成AI」とは少し異なります。
AI PCの「AI」はどちらかというと人間の作業の補助をしてくれるアシスタントのようなイメージで、ChatGPTをはじめとするゼロから何かを生み出す生成AIのようなパワーはありません。
ただ、もちろん他のPCと同様に、ChatGPTやStableDiffusionなどの公式サイト上にある生成AIなら問題なく使うことができます。あくまでも自分のPC上で生成AIを動かす「ローカル型」は難しいというお話になります。
このあたりの違いはローカル型とクラウド型の違いの説明とも関連するので気になる方はぜひご覧ください。
AI PCを使うとChatGPTとかの生成AIの処理速度は速くなる?

基本的に速くなることはないです!
AI PCは「AI処理が速くなる」というような売り出し方をされているため誤解が生じがちですが、AI PCがあってもChatGPTなどの生成AIの処理速度が速くなったりすることは基本的にありません。
これに関しても、クラウド型とローカル型の違いが関係しています。
「クラウド型」の生成AIは、あくまでもクラウド上のGPUが処理を担っているため、クラウドの外にある自分のPCが何か影響を及ぼすことはありません。これはAI PCでも超ハイスペックのPCでも、逆に低スペックのPCでも、スマホでも同様です。自分のデバイスの性能がクラウド型生成AIの処理速度に影響を及ぼすことは基本的にありません。
では、もう一方の「ローカル型」の生成AIなら速度が速くなるのかというと、そういうわけでもありません。そもそもAI PCではChatGPTのような大規模生成AIをオフライン環境でまともに動かすことはできないため、速度以前の問題となります。AI PCに搭載されているNPUだけでは圧倒的にパワー不足です。
少し語弊はあるかもしれませんが、たとえるなら「AI PC」は自動車のようなものと言えるかもしれません。車を買うことで移動は便利になり、行動範囲も大きく広がります。そして「ローカル型」とは、この自分の車で色々な場所へ移動することを指します。
一方で、「クラウド上のサーバー」は飛行機です。より速く、より遠くまで移動できるようになり、行動範囲は海を超えて広がっていきます。「クラウド型」とは、飛行機のチケットを買って色々な場所へ移動することを指します。
ChatGPTのような「生成AI」は海を超えて移動するようなことです。基本的には飛行機を利用することになりますが、この飛行機が飛ぶ速さには、車のスペックは全く関係ありません。どれだけ性能の良い車(PC)を買ったところで、飛行機(クラウド上のサーバー)のフライト時間(処理時間)は短くなりません。かといって「じゃあせっかく性能の良い車も買ったし、自分で運転して移動するか」といっても、車だけで海を超えて移動するのは難しいですよね。
つまり、そういうことです。AI PCがあっても「飛行機」の速さは変わらないし、単独で海は超えられません。海を超えたい時には、AI PCではなくクラウドサーバーを使いましょう。
ChatGPTのような生成AIをローカル環境で単独で動かすというのは、現状のAI PCにとっては少し荷が重い仕事です。
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